事必帰正

第2章 真のお父様の業績と遺志

全世界人類に根ざした 文鮮明総裁の思想について

第2章 序文

「神様の宇宙創造がそうであったように、一寸の誤差も許容できない人類再創造の大革命的役事でした。誰とも相談すらできない孤独な生涯路程でした。神様までも顧みられず、徹底して独りで訪ねていかなければならない茨の荒野路程でした。幾度も反復される生死の岐路で血を吐きながらも、天との約束を成しとげるため、再び立ち上がらなければならなかった不死鳥の、モデルとしての『性』を立てるための人生でした」

- 文鮮明先生のみ言葉より

誰でも1度は生きていく地上生活。天運でお父様に出会い、私は神様の摂理と人類歴史にとって意味のある人生を生きることができました。

私の人生から、神様の平和世界実現のためのお父様のビジョンと業績を抜いたら何が残るでしょうか。

お父様は生涯の苦労を通して、天道と天理の根本を見つけて確立し、それらを最も幅広く多様に教育され、犠牲的な生涯を通して、自ら実践して成した見本を私たちに残してくださいました。

その方が展開してこられた数多くの活動と業績、人類の前に残した遺志の中でも、最も記憶に残るいくつかのことを記したいと思います。

40年冷戦時代の終結

40年冷戦時代の終結

1987年、米国FBIがお父様に一つの文書を送ってきました。ソ連KGBと北朝鮮が工作して、日本赤軍派の行動隊員25人が実行した「文牧師暗殺の試みがあった」という内容でした。

いわゆる菊村事件です。

1985年にスイスのジュネーヴで開かれた、第2回世界平和教授アカデミー国際会議のテーマを「ソ連帝国の崩壊」としたことで、刺激を受けた国際共産主義者の報復テロが、その実行段階で発覚したのです。

1966年から行ってきた全国的な反共啓蒙活動を1次元高め、1968年に国際勝共連合を創設したお父様は、その後、全世界で共産主義思想とその体制の矛盾を一つひとつ明らかにするなど、世界的な運動を展開してこられました。

1975年にベトナムから米軍が撤退して共産主義の勢力が急速に膨張し、全世界の国々の38%が共産化された1970年代後半にも、お父様は「共産主義は70年を越えることができない」と、早くから共産主義の終焉を公然と予言されました。

1984年3月当時、ダンベリーで服役されていたお父様は急な指示をされました。翌年、スイスのジュネーヴで第2回世界平和教授アカデミー世界大会の議長として決まっていたシカゴ大学教授モートン・カプラン(MortonA.Kaplan)博士に会って、大会のテーマをソ連帝国の崩壊と関連付けるようにしてみなさいというみ言葉でした。モートン・カプラン博士は、「冷戦(ColdWar)」という用語を初めてつくった張本人で、「デタント(détante、緊張緩和)によって東西両陣営が共存しなければならない」という理論を支持する国際政治学界の巨匠でした。「ソ連帝国の崩壊」というテーマは、ソ連に大きな刺激を与えるだけでなく、事実上、彼が主張してきた政治学理論とも背反する内容に近かったのです。1980年代に東欧諸国の経済危機がひどかったとはいえ、共産圏全体に及ぼすソ連の力は、実に強大だった時代でした。当時、ソ連帝国の崩壊理論を掲げる学者はだだの1人もいませんでした。

お父様の意向を聞いたカプラン教授は、やはり呆れた様子で猛反発しました。

「とんでもありません。ソ連の滅亡?笑い者になるだけですよ」

しかし、このまま引き下がることはできませんでした。

「真剣に一度考えてみましょう。文総裁がそう言われる時には、それだけの問題があるからではないでしょうか」

「何の問題でしょうか」

「ソ連共産体制の基本理念である、弁証法的唯物論と唯物史観のことです」

「……はい?」

私は、自分が持っている能力を尽くして、最大限、説得を試みようと論理を展開しました。

「唯物論は反真理です。物質を根本として定める物本や、人間を根本として定める人本が真理ではないのと同じです。絶対価値は神を中心とした神本からのみ出てくるのです。そして共産党宣言と唯物史観は徹底した偽りに過ぎません。これは私の個人的または感情的な判断ではありません。『全ての人が能力に応じて働き、必要なだけ分配される』という共産党宣言文の理想社会自体が虚構的論理であり、反真理なのです」

このような根源的な問題と共に、当時のソ連が抱えている現実的な危機状況を指摘しました。バランスを失った外交政策、後退する農業政策、アフリカ諸国に対する無理な共産化戦略、ソ連と衛星国家間の不安定な結束、多民族一体理想と現実との間の問題など、それらは私の作り話ではありませんでした。厳然とした事実だったのです。

「今日の現実を見てください。この不平等な世界が資源と物質の貧困によるものでしょうか。そうではありません。共に生きる隣人に配慮する心のない良心の貧困、欲望を調節できない貪欲と過剰、神様の下に全ての人間が皮膚の色と宗教と国家を超越して、一つの兄弟だということを悟ることができない偏見と無知が問題なのです。そのため、数多くの人たちが不平等と不幸に苦しんでいるのです。物質がどんなに豊かでも、それを分け与えることができる心がなければ、結局は不平等な社会になってしまうのです。唯物思想では、分け与えることによって喜びを感じる人間の心を説明することはできません。人間は、法律・制度的な基本権の源泉となる天賦人権を、絶対価値として認識しなければなりません。『共産党宣言』が主張する目標は、彼らの思想と実践では絶対に成すことはできません。私たち全てが念願する共生・共栄・共義の世界は、人類が一兄弟であるという内的覚醒に基づいてのみ、成すことができるのです」

やがて、カプラン教授の心は少しずつ動き始めました。

「よく分かりました。間違った内容ではありません。しかし、崩壊という極端な表現を使っていいものか分かりません。刑務所におられる文総裁と直接、面談してみたいと思います」

共産主義は70年を越えることができない

カーキ色の囚人服を着て、面会室に出てこられたお父様の意思は確固たるものでした。

「それでは、文総裁、『maybe』という表現を使っては如何でしょうか」

とうとう、カプラン教授がこのように一歩譲歩したのです。しかし、返ってきた答えは依然、確固たるものでした。

「いいえ。ソ連崩壊は必然だと、はっきりと、釘を刺しておいたほうがいいです」

「しかしですね……」

「ソ連崩壊は歴史進行の一つの過程です。心配しないで、私の言う通りにしてみてください。後で先見の明に優れた学者だったという評価を受けるでしょう」

結局、カプラン教授は、お父様の意思を受け入れることにしました。そうして、第2回世界平和教授アカデミー世界大会には「ソ連帝国の崩壊」という、史上初のテーマが登場することになったのです。当時としては学界だけでなく、社会全般においても破格的なニュースでした。ソ連帝国崩壊論が世界の学界の公式談論として浮上した最初の事例だったからです。

ところが、分野別碩学たちの研究調査を総合的に討議する会議の場で、それが予測可能なシナリオだという点が認められました。表面上は、あれほど堅固にみえたソ連帝国が、ふたを開けてみると、意外にも問題が少なくありませんでした。国家エリート間の葛藤、党と国民との乖離、思想と宗教の問題、ロシア人と非ロシア人との間の反目、生産力の低下など、内部的な問題が深刻に進んでいたのです。

お父様はすでに、ずっと前から、統一原理の摂理史観に基づいてお話されていました。

「共産主義は70年を越えることができません。長くもっても73年を越えることはできません。また、ソ連共産党書記長も8代を越えることはできないでしょう」

ソ連共産党の最高指導者をみると、レーニン、スターリン、マレンコフ、フルシチョフ、ブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコ、そして8代目がゴルバチョフでした。

レーニンの主導したボルシェヴィキ革命が起きた1917年から70年目となる1987年、そして73年目となる1990年の間にどのようなことが起きたでしょうか。

ベルリンの壁が崩壊(1989年)し、米国のブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ大統領が地中海のマルタ島で行った米・ソ首脳会談(1989年12月)で冷戦終結に正式に合意し、ゴルバチョフ大統領はソ連共産党の解散とソビエト連邦の解体を宣言(1991年)しました。

ついに1991年末、ロシアのボリス・エリツィン大統領と、ウクライナのレオニード・クラフチュク大統領、ベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチ大統領の3人が一堂に会して、「ソビエト社会主義共和国連邦は、これ以上存続しない」とする合意に至ります。

お父様が正確に予言した共産主義帝国としてのソ連の崩壊と共産陣営の没落、その大きな現代史の流れの裏側に、世界平和教授アカデミーの行事の責任者という、言わば助演としてであれ、共に同参できた事実に、私は今でも少なからぬ誇りと感動を胸に抱いています。

ソ連帝国の崩壊

1976年9月、お父様は米国の首都ワシントンD.C.で、「希望の日講演会」(ワシントン・モニュメント)を開き、「世俗的人本主義と唯物論を捨てて、神様から来る霊性を回復しなさい! 」と、米国国民を覚醒させる演説をしました。

以前にもその広場で、福音主義者のビリー・グラハム牧師、黒人人権活動家のマーティン・ルーサー・キング牧師が宗教集会を開きましたが、その日はどの集会よりも多くの聴衆が集まり、米国建国以後、最大の宗教集会として記録されました。モニュメント大会でお父様は宣言されました。

「ソ連のモスクワでも大会を行うつもりです」

それから9年後の1985年に、ゴルバチョフ氏がソ連共産党書記長になりました。続いて、1990年にはソ連大統領に就任します。その後しばらくして、ゴルバチョフ大統領は、世界的な勝共運動家であり、反共反ソ運動陣営の代表的なリーダーであるお父様を、モスクワに招待しました。そのようにして、お父様は、ワシントンD.C.のモニュメント広場で宣言した「モスクワ大会」の約束を守ることができたのです。

ゴルバチョフ大統領は、ソ連共産党書記長になった後から、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(開放)の政策を推進します。ところが、米国と西側の支援と応援がなければ、ゴルバチョフ政策は成功することが困難であり、一方、この政策に抵抗するソ連内の正統マルクス・レーニン主義者と共産党指導部によって、いつ、その政治生命が終わるか分からない状況でした。ゴルバチョフ大統領は、米国と西側に自分の政策の正しさを知らせるために、代表的な勝共運動家であり、反共反ソ連陣営のリーダーとして、数年前から「ソ連帝国の滅亡と共産主義の終焉」を公に宣言してきた「レバレンド・ムーン」をモスクワに招待したのです。

1990年4月、お父様が設立した世界言論人会議とソ連国営通信社ノーボスチの共同主催により、モスクワで世界言論人会議が開催されました。この期間中、ゴルバチョフ大統領と文鮮明総裁の単独会談がありました。私はこの会談で、お父様がゴルバチョフ大統領に大胆な提案をされるところを見守りました。

「共産主義を捨て、神主義を採用してください。共産党を解散してください。宗教の自由を許可してください。扉を大きく開き、自由陣営の投資を受け、ソ連経済を生かしてください。ソ連の若者たちの教育を私に任せてください。韓国と国交を結んでください」

ゴルバチョフ大統領に対し、堂々とよどみなく語られるお父様の姿は、本当に感動的で驚くべきものでした。ソ連が進むべき方向を正確に指摘される、自信に満ちあふれた助言だったのです。

さらに驚くべき事実は、ゴルバチョフ大統領がお父様と会話を交わしながら、自然と心の扉を開き始めたという点でした

ゴルバチョフ大統領の心を動かしたのは、お父様の優れた話術や論理ではなく、「真の愛をもって生涯を生きてこられたお父様の真正さ」でした。生涯、反共運動、勝共運動をする間に、ソ連と金日成政権から暗殺の脅威を受けたりもしましたが、それでもお父様は、共産主義の宗主国の最高指導者を敵や怨讐ではなく、真の愛で一つになるべき兄弟と見たのです。

ゴルバチョフ大統領との会談は成功裏に終わり、ふたりは義兄弟の関係を結んで別れました。その後、ゴルバチョフ大統領は、第2回世界平和連合国際会議(1994年、ソウル)に夫人のライサ女史と一緒に参加するなど、お父様が主催される国際大会にたびたび参加し、国際勝共連合運動の発祥地であり、家庭連合の歴史がつまっている聖地の京畿道九里市水澤里中央修練所と漢南洞公館を訪問しました。

お父様はモスクワ大会以降、数年間、ソ連で英語ができる大学生、学者、知識人と指導者を米国、日本、ソ連の休養地で行われるプログラムに招待し、神主義と統一思想、西欧民主主義の理念と自由市場経済の原理を教育されました。そのような基盤の上に、1991年、国際教育財団(International Educational Foundation、IEF)が設立されました。

1990年12月と1991年2月には、80人以上のソ連の代議員と、ブルガリア、チェコ、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ユーゴスラビア出身の長官と国会議員60人余りが、米国指導者会議(ALC)のセミナーに参加しました。その中にはブダペスト市長のデムスキー・ガーボル氏、ソ連法務部長官のセルゲイ・ルシコフ氏のような人物も含まれていました。セミナーでは、彼らは共産主義に対するカウサ(CAUSA:南北米統一連合)の批判理論とその代案、西欧民主主義の核心に関する概論的講義を聞きました。

米国指導者会議(ALC)は、1991年4月にも米国ワシントンD.C.で世界指導者会議を主催しましたが、米国の首都で開催された、ソビエト連邦15ヵ国の共和国を代表して政府高官や政治指導者など200人が参加する前例のないセミナーでした。

ソ連が崩壊する最後の数年間で、15ヵ国の共和国代表が一堂に会した行事はこれが唯一でした。ソ連最高連邦委員会の連邦議員26人、共和国議員75人をはじめ、共和国の副大統領、長官、大使などがこのセミナーに参加しました。彼ら代表団は、ワシントンでは米国の連邦官吏たちと会議を開き、ニューヨークでは、経済指導者をはじめ、市・州政府の官僚たちと会合をもち、資本主義体制に対する実体的な理解を深めたのです。

一方、ソ連崩壊後、数万人の学生と教授と社会指導層の人士たちが統一原理セミナーに参加して、「文総裁の霊的理想に基づく希望のメッセージ」に大きな感動を受けました。1992年には、クリミア半島で国際教育財団が主催し、ロシア教育部が後援する「霊的復活とロシアの教育」セミナーを開催、連続的に開催されたこの行事には、全国から1600人を超える教育者たちが参加しました。

また、ロシア政府の公認の下、統一原理に基づいた小・中学生用の教育教材が作られましたが、この教材は、ロシアの1万以上の学校で教材として使用され、その中のいくつかの教材は、モンゴル、アゼルバイジャン、タジキスタン、キルギスなど、多くの国の言語に翻訳されて活用されました

さて、1991年8月、ゴルバチョフ大統領夫妻が、クリミア半島の休養地で夏の休暇を過している間、反改革的なソ連共産党の保守派が、ゴルバチョフ大統領を逮捕し、軍事クーデターを起こす事件が発生します。共産主義のそうした最後のあがきにより、まかり間違えれば脱冷戦の希望が崩れるのではないかと危惧されるような状況でした。この時、お父様がゴルバチョフ大統領に一つのメッセージを送られるのです。文総裁から書信が来たという補佐陣の報告を聞いたゴルバチョフ大統領は、その場ですぐに読むように指示したといいます。

書信の内容はシンプルでした。

「共産党はすでに終わっています。彼らには意志も結集力もありません。屈服しないでください」

当時ニュースを通しても報道されましたが、モスクワなどの主要都市でクーデターが起きた時、市内に入る軍部の戦車を肉弾で阻止する学生たちがいました。数千人に過ぎない学生たちの情熱で、最終的には軍人たちも銃を置いて戦車を停めるしかありませんでした。このクーデターはわずか3日で幕を下したのです。

その時、その戦車を阻止した核心的な大学生と知識人たちは、他でもなく、お父様が設立した国際教育財団の教育に参加した人々だったということを、皆さんはご存知でしょうか。

共産主義イデオロギーの虚構性を悟り、新たに西欧民主主義の原理と開放社会に目を開いた若者たち、25回にわたって米国で教育を受け、未来への希望を抱いてソ連に戻った3500人の青年・学生たちが、他でもない彼らだったのです。このことは今後、歴史家たちによって、再び考証されることでしょう。

血は水よりも濃い、真の愛は血よりも濃い

モスクワ大会を終えて、お父様は語られました。

「世界的な冷戦体制が解体する過程で、偶発的な戦争が世界や韓半島で勃発する恐れがある。これから1年以内に平壌で大会をしなければならない」

1989年9月、フランスの商業衛星が撮影した北朝鮮・寧辺地域の秘密核施設が全世界に知られます。その頃の韓半島は、北朝鮮の核の危機が始まったばかりの緊迫した状況でした。旧ソ連の実験用原子炉を基盤に、北朝鮮が秘密裏に核関連の活動と核兵器開発プログラムを進めているという事実が、全世界に公開されたのです。

文鮮明総裁の平壌訪問・金日成主席との会談につながる一大事件は、1991年11月末から12月初めの間に行われました。北朝鮮政府の公式的な招待による、国家を代表する資格や安全に対する保障もない中での個人的な訪問でした。万が一、金日成や北朝鮮政府がお父様を拘禁すれば、生命の安否すら保障できない状況でした。

平壌訪問後、帰国されてからまもなく、お父様に個人的に伺ったことがあります。

「安全に対する保障もない状態で、滞在期間中、どれほど神経を使われ大変だったことでしょうか」

お父様は答えました。

「本当に大変だったのはそれではない。50年以上の間の金日成に対する怨恨と怒りを溶かして愛の心情に変えることが一番大変だった」

平壌訪問期間中、お父様は故郷である定州も訪問し、金剛山をはじめ、平壌と経済開発投資地域などを見て回り、金達玄(キム・ダルヒョン)副総理と祖国平和統一委員会の尹基福(ユン・ギボク)副委員長に万寿台議事堂で2度会い、経済投資と協力に関する実務会談を行いました。

会談の場で尹基福副委員長は、「私たちの方式の社会主義、主体思想、金日成革命歴史」などを雄弁に演説しましたが、ここでお父様が立ちあがり、「血は水よりも濃い、真の愛は血よりも濃い」という主題の講演を、あたかも信徒たちに講義するかのように語られたのです。

「人間中心の主体思想では統一はできません。神主義の頭翼思想でなければなりません。南韓に派遣されている要員の名簿をください。私が全て教育します」

度の過ぎた破格的な内容を2時間以上も講演し、最後には万寿台議事堂のテーブルを手のひらで叩きつけるようなことまでしました。お父様に随行していた世界平和連合の幹部たちによると、その時はとてもハラハラし、胸が震えるのを通り越して、冷や汗が流れて身の毛がよだつようだったといいます。

「金日成主席との会談は、水に流れてしまったなあ。これでは北朝鮮に拘禁されるのではないか」

ほぼ同じような感情を金達玄副総理と尹基福副委員長の表情からも感じとることができたといいます。

ところが、懸念していたのとは異なり、万寿台議事堂での会談の結果、世界平和連合・文鮮明総裁と朝鮮海外同胞援護委員会・尹基福副委員長との間に、10条項の声明書が発表されます。その内容はこうでした。

「近い将来、南北は統一する。核はただ平和的にのみ利用し、核兵器の製造や配置はなくならなければならない。民族の主体的で大団結の原則により統一する。南北韓離散家族の迅速な再会と訪問を推進する。政治軍事的対決を解消する。南北韓芸術団体の相互交流と公演を行う」

文総裁と北朝鮮対外経済委員会・金達玄委員長の名義で、経済協力関連の合意書も締結されました。北朝鮮豆満江の自由貿易地帯(先鋒地区)、元山地区の軽工業基地建設、金剛山一帯の観光地区開発にお父様の統一グループが投資し、国際企業の投資を誘致するという合意書でした。

北朝鮮がどのような体制でしょうか。全てが監視され、上部に報告される体制ではありませんか。

万寿台議事堂で行われたお父様の講演内容と雰囲気まで金主席に報告し、金達玄副総理と尹基福副委員長は、金主席に「会わないほうがよい」という意見を述べたといいます。ところが報告を受けた金主席は、はははと笑いながら「文先生がそのような人物であれば、私が会ってみなければ」と言ったというのです。

真の愛、神主義・頭翼思想による統一論

1991年12月6日、世界平和連合の文鮮明総裁と、朝鮮民主主義人民共和国の金日成主席との歴史的な出会いは、興南の麻田主席宮で行われます。お父様が言及されたように、私たちはこの出会いを「聖書のヤコブとエサウの出会い」のような摂理史的な再会であり会談として解釈しています。

麻田主席宮が位置する興南は、6.25韓国動乱の直前に、お父様が平壌でのキリスト教徒たちの誣告(故意に事実を偽って告げること)によって、2年半の間、政治犯として収容されていた興南窒素肥料工場があるところでした。収監された収容者の多くは、平均1年以内に死亡するという「地獄の底」のようなところです。おそらく北朝鮮は、意図的にその興南の麻田主席宮を会談場所にしたのでしょう。

お父様が「金主席は私より7歳も歳上なので、お兄さんとなり、私は弟になる」という話をされると、金主席は快く、兄弟と呼び合おうと答えました。聖書の中のエサウとヤコブのように、互いに手を取り合って兄弟の関係になったのです。

午餐と一緒に行われた会談で、お父様と金主席はお互いの趣味生活を尋ねて会話が始まり、お父様は「真の愛、神主義、頭翼思想による統一論」という言葉を金主席に力説しました。その途中で、金主席は拍手を3回もしながら、「ありがとうございます」という言葉を繰り返しました。その前日、お父様が金達玄副総理と尹基福副委員長と締結した内容をもとにした「非核化と核の平和的利用、迅速な統一、経済協力、学術および芸術の交流、離散家族の再会など」の内容について、金主席は異議を提起せずに合意したのです。

金主席は会談を終えながら、最後に「米国のブッシュ大統領の北朝鮮招請と、米国との関係改善を周旋してほしい」とお父様にお願いもしました。その後、お父様と金主席は互いに手をつないで玄関まで出て記念撮影をしたのです。マスコミの報道写真を見ると、金日成や金正日は公式撮影をするときは、常に手を後ろで組んでいます。しかし、お父様と一緒に記念撮影をするときの金主席は、お父様と手をしっかりと握っていました。これが象徴するところは非常に大きいと私は考えています。お父様はこの出会いを、神様の摂理史的な観点から見つめて、金日成主席と対されたのです。

お父様が北朝鮮政府と結んだ声明文と合意文は、それから4日後に開かれた南北高位級会談(1991年12月10日~13日)で、大韓民国の鄭元植(チョン・ウォンソク)総理と北朝鮮の延亨黙(ヨン・ヒョンムク)総理がサインした「南北基本合意書」にほとんど反映されました。

南北基本合意書は、その後、締結された6.15共同宣言と10.4宣言に比べて、より相互対等な関係で結ばれた実質的な統一方案でした。

韓半島の分断は、よく地政学的な次元で冷戦時代の産物として説明されてきました。しかし、お父様が究明した神様の救援摂理史観によると、南北分断は「体制としては共産主義と自由民主主義、価値観と世界観では唯物論と有神論、理念では左翼と右翼、文化と思想では人本主義のヘレニズムと神本主義のヘブライズム、そして個人の次元では心と体の対立闘争」を意味しています。

南と北は対立闘争する両世界の象徴であり、結実体です。したがって、人類の生き方を規定してきた両世界の対立と闘争の歴史を終結させることにより韓半島分断の問題を解決するということは、救援摂理史的な意味と人類文化史的な意味の両方を含むことになるのです。このような側面から、南北韓平和統一のモデルは、「人類歴史を通して対立闘争してきた難問題を解決し、人類を永久的な平和世界に案内する設計図」だと言うことができるでしょう。

共産主義理論の論理的な矛盾を把握し、勝共思想を体系化したお父様は、究極的には共産主義を凌駕する思想的体系とビジョンを提示しなければならないと強調されました。そうしなければ、「火を求める蛾のように共産主義の虚構的な宣伝扇動に飛び込む青年学生と知識人たちを、真の平和と統一の道に導くことはできない」と見られたのです。また、「共産主義の問題だけでなく、資本主義がもつ弊害まで克服することができる代案が含まれてこそ、真の平和世界建設が可能である」と言われました。平和的な南北統一も、こうした思想とビジョンであってこそ可能なのです。

このようにして出てきたのが、左翼と右翼を一つに統合して矛盾と葛藤をなくし、調和とバランスを成す「頭翼思想」なのです。まさにこの思想の目指すところは、人類歴史を支配してきた対立闘争を終結させ、神様を中心とした共生・共栄・共義主義社会を追求するという点で、「神主義」というのです。

お父様は、このような神主義・頭翼思想を中心として、韓国、米国、日本、ソ連、中共、南米をはじめとする全世界主要国で、平和運動を展開してこられました。

1960年、70年代の日本は、全学共闘会議のような左翼グループの学生運動が激しかった国の一つでした。1945年に合法的に登録された共産党は、この時期に院内議席数を大幅に増やし、影響力を急速に拡大してきました。

お父様はこのような日本に国際勝共連合を創設し、衆議院(下院)と参議院(上院)の議員300人余りを勝共議員として組織しました。また、神主義と頭翼思想で訓練された日本の全国大学原理研究会出身者たちを、彼らの補佐官や秘書として派遣したのです。この時期、日本の企業は労働組合に共産主義が浸透するのを防ぐため、勝共連合に自社の従業員たちの思想教育を委託することもありました。

お父様は全国民教育のために日本で報道機関を設立し、在日同胞たちに勝共理論と統一思想を教育して、韓日の女性たちを姉妹結縁で結び、1980年初めには「韓日海底トンネルプロジェクト」まで発表することで、北東アジアと世界平和のための礎石を築いたのです。

「ワシントン・タイムズ」創刊

米国の首都ワシントンD.C.では、世俗的人本主義とリベラリズムに傾倒したメディアに対抗し、これらとバランスをとるために、「ワシントン・タイムズ」と「UPI通信社」など多くの報道機関をUCIが設立したり、買収しました。このような報道機関は、一つひとつに天文学的な資金を投入しなければならず、お金だけあればできるというものでもありませんでした。当時、韓国人の立場で、お父様が米国の首都ワシントンD.C.に日刊紙を創刊することができたのは、米国社会がこれまでお父様のメッセージを通して、精神的な渇きを解消してきた信頼の土台があったからこそ可能だったのです。

特に1970年代末、ジミー・カーター大統領の政策で韓米関係が難しくなり、米国の世界的な地位も弱くなっている時、お父様はカーターに対抗したレーガンをサポートし、米国大統領に当選させる決定的な貢献をしたのです。

1982年、「ワシントン・タイムズ」を創刊した直後には、レーガン政権の米国によって、ソ連の世界共産化の意志をくじき、冷戦時代を終わらせる役割を果たせるように、積極的に支援しました。「ワシントン・タイムズ」は単なる地元新聞ではなく、米国全域に影響を与える保守言論として急成長しました。米国の若者たちの道徳的退廃と世界的な左傾化の流れを妨いだだけでなく、米国の指導者をはじめ、世界の指導者たちに「時代を読む正しい歴史的観点」と「米国に対する神様のみ旨」を悟らせるために大きく貢献したのです。

お父様は、中国の開放を助けることにも多くの投資を追求しました。

中国の女性指導者たちを韓国に招待し、韓国の女性指導者たちと姉妹結縁を結ぶようにすることで、当時、中国社会が外部の民主社会から持続的に情報を交換することができる橋の役割を果たしたのです。

また、私たちの同胞の地位を向上させ、統一に協力することができるように、朝鮮族が最も多い吉林省の延吉にある延辺大学に工学部をつくり、中国のベスト100重点大学の一つへと発展させました。

ドイツの優れた機械工業会社を買収して中国を助け、パンダプロジェクトなどを通して、中国の産業化を支援するための努力もしました。このために、米国や先進国から非難を受けたりもしましたが、お父様は大して気にも留められませんでした。人間の発明と発見の恵沢は、特別な能力をもった人間やその国だけのためのものではなく、「神様が与えてくださった人類共通の賜物であるため、万民が公平に享受すべき」という、普段から言われた「技術平準化」に対する持論を曲げることはされませんでした。

お父様が国際的に作った機構や機関の名称の中には、「世界」「平和」「国際」「統一」のような単語がついていない団体はありません。全てが国や民族間の利害関係を越えた、神様の理想を実現するための犠牲と努力だったのです。

宗教と教会の時代を越えて家庭の時代に

宗教と教会の時代を越えて家庭の時代に

世界基督教統一神霊協会は1954年5月1日、ソウル城東区北鶴洞の小さな家で創設されました。避難所のような釜山ボムネッコルの草庵からソウルに来て、みすぼらしい家屋を賃貸で借り、その入口の門に「世界基督教統一神霊協会」という看板をかけました。門が低く、看板も高いところに付けることができず、大人が中に入ろうとすれば頭を下げなければなりませんでした。

世界基督教統一神霊協会は、その長い名称の代わりに、よく「統一教会」と呼ばれました。この統一教会という名称は、お父様や私たちが作ったものではありません。既成のキリスト教会や世間の人々がそのように呼び、いつのまにか私たちの間でも使われるようになった呼び名です。

統一教会が出発した当時、お父様は確かに言われました。

「私は新しい宗派や教派を設立するために、この道を出発したのではない。一日でも早くこの教会の看板を下ろす日を待っている」

多くの人がその大きな意味を理解していませんでした。しかし、その後、長い歳月にわたり、お父様が歩んで来られた道を振り返ってみた時、そのみ言葉をお父様が自ら一貫して実践して来られたことを知ることができます。

1970年代後半から、私はお父様の意向に従い、超教派および超宗教運動(NewERA)、神様に関する年次会議、世界宗教青年セミナーなどを担当してきました。

1983年4月25日、お父様はこれらを総括する国際宗教財団(The International Religious Foundation:IRF)を創設され、私は理事長という重責を引き受けて超宗教活動をしてきました。1985年11月には、第1回世界宗教議会が開催されて、宗教と宗派を越えた最高位の聖職者、宗教学者、神学者、霊的指導者たち600人余りが集まった開会式の場で、お父様は強調されました。

「私が知っている神様は分派主義者ではありません。神様は小さな教理の内容にはとらわれません。私たちは、教理や宗教的儀式に盲目的に服従して生じた神学的葛藤から、私たち自身を解放させ、その代わりに神様との生きた会話に焦点を合わせる必要があります」

そして閉会の辞では、次のようなみ言葉で宗教間の一致を訴えました。

「小さな川が海で出会うように、私たちのさまざまな信仰と伝統は、結局、一つに出会うのです。生きて流れる川の目的地である大洋は、地上における神様の国の建設です」

これほどさまざまな宗教的伝統、民族的背景、文化、生活様式をもつ人々が、一堂に会して和合を論じ、この地球の将来のために深い討論をしたことは、これまでにないことでした。それはただ、お父様の一貫性のある構想の下で、無限の犠牲と投入があったからこそ可能になったことなのです。

祝福結婚、万人のための普遍的な儀式

1994年5月1日、世界基督教統一神霊協会創設40周年を記念する行事で、お父様は宣布されました。

「統一教会の時代が終わり、今日から家庭連合の時代です。個人救援時代から家庭救援時代に転換しました。したがって、これまで個人救援のための信条だった『私の誓い』は家庭中心の救いのための『家庭盟誓』に替わります」

1996年8月に米国で世界平和家庭連合創設大会を挙行したお父様は、ついに1997年4月10日、世界平和統一家庭連合を公式的に発足させ、世界基督教統一神霊協会の看板を下ろしました。

考えてみてください。
人類歴史上、自分の代で宗教活動をはじめて、ここまで大きくした人物がお父様以外にいたでしょうか。

その上、外部の圧迫や内部問題によるのではなく、自らその宗教の看板を下ろした人物がいたでしょうか。

このようにお父様は、神様の摂理歴史で人類が進むべき道を提示するばかりでなく、その道にどんなに多くの犠牲と困難と無理解と偏見が伴うとしても、必ずご自分が実践され、み言葉を実体的に成しとげられる方でした。その方に生涯で最も近く、最も長い時間侍ってきた者だからこそ、私は自信をもって証言することができるのです。

真の父母様は、以前から教会の看板を下ろす日を待ちこがれ、その日を待っていると言われました。それがまさに、1997年4月8日、み言葉として宣布されました。4月10日から天と地の前に実施される貴い歴史的な壮途の同参者となりました。世界基督教統一神霊協会は摂理的にもはや必要がなくなり、これからは世界平和統一家庭連合です。私たちは皆、世界平和統一家庭連合の会員です。今まであった世界平和家庭連合も、そこに統一されることによって方向と目標を明確にし、名前を改名して、その日に出発したのです。世界基督教統一神霊協会は摂理の主流からは、もはや必要のない立場になり、全て世界平和統一家庭連合として一つになるのです。それはどういうことでしょうか。これは目に見えず感じられないだけで、人類史的な大革命なのです。キリスト教の看板を外し、キリスト教のしがらみを解いたということです。

郭錠煥 <360万双祝福完遂は神様の願い>(『統一世界』315ページ1997年5月号)

神様は人間を救うために、氏族や民族が置かれている歴史的、社会的条件、自然環境に応じて、さまざまな宗教を誕生させ、発展させてきました。それぞれ異なる方法によって、救いの道を模索してきたのです。その過程において、宗教が本来の使命を離れ、宗派と教派を形成し、むしろ分裂と葛藤を起こしてきた部分もありました。

神様の理想を見ると、人間が宗教の中に永遠に留まることはありません。宗教はそれ自体が究極の目的ではありません。ただ、堕落した人類を導き、神様と本来の父子関係を結ぶように「教えを与える学校」なのです。学生が一定の課程を終えたら学校を卒業するように、堕落した人類が救いに至り、神様と本来の関係を回復した後には、もはや宗教に留まる必要はないということです。

お父様は「神様を中心とする一家族」こそ、本来の宗教が追求しなければならない重要な目標であることを常に強調されました。このような次元で、家庭連合の出発は、摂理の中心が「宗教から家庭に移ったこと」を意味するのです。また、宗派や教派とは関係なく、神様を父母として認識し、真の愛を実践して真の家庭を成せば、「神様を中心とする人類一家族」の一員になることができる時代圏に入ったことを意味しています。

神様の創造理想が根を下ろさなければならないのは、まさに家庭です。

家庭は平和を成す最も基礎的な単位であり、真の家庭理想を実現することにより、宇宙的な平和と神様の王国の出発点となるのです。これらの理想を地上で実現できるようにしてくれる実践的な出発の場がまさに、「合同結婚式」として知られている「祝福結婚」です。

私はお父様から、これらの祝福行事を実行する代表として立てられる恩恵を受けました。1961年に36家庭祝福の賜物を受けた翌年から、72家庭、124家庭、430家庭……。また、祝福の普遍化と世界化時代が始まった3万家庭、衛星中継を通して全世界的に執り行われた36万家庭、3600万家庭、3億6千万家庭までの全ての祝福行事を、お父様のみ言葉の通り主導的に準備し、進行しました。これ以上ない光栄なことでした。

祝福結婚こそ、統一教会の最も核心的な儀式にほかなりません。しかし、家庭連合時代に入り、この祝福結婚式は、いわゆる「統一教徒」のためだけの儀式を越えた、「万人のための普遍的な儀式」として、その扉が大きく開かれることとなりました。統一教会は、単に組織の名前だけを変えたのではありません。その体質を完全に変えたのです。私はこれを空前絶後の「人類史的大革命」と理解しています。

人類の歴史を一変させる大革命に草創期から参加し、生涯、あふれる思いをもって駆け抜けて来れたことに、いつも感謝しています。

超宗教活動と平和UN摂理

超宗教活動と平和UN摂理

平和と平和機構の起源は、神様と人間の霊性と普遍的な道徳性にあります。ところが、国際連合(UN)憲章には、「神様」と「霊性」という言葉がありません。人類の和合と普遍的価値の実現のために、また地球星の平和のために膝を突き合わせなければならないUN会議場は、かねてから加盟国間の利益をめぐって争い合う、政治的角逐の場へと変質してしまいました。

1998年12月、米国ワシントンD.C.で世界平和宗教連合の会議を開催したお父様は、この日、全世界から参加した主な宗派をはじめ、各界の指導者たちに「UNを更新する超宗教超国家的な連合体設立」を提唱されました。

「今までUNは、人間の身体的で外的な部分を代弁してきました。人間の心と体が一つであるように、これからは宗教が参加して、心的で内的な領域を導いていく必要があります。心と体がバランスを成してこそ人間に平和が来ます。宗教はこれ以上、隠遁した者のように現実の国際問題から目をそむけていてはいけません」

お父様の演説に多くの人々が共感し、これをきっかけに、1999年2月にソウルで、インドネシアの当時現職のワヒド大統領と米国のダン・クエール前副大統領をはじめとする、全世界の前・現職国家元首と宗教指導者1千人が参加する中で、「世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)」が発足しました。

この日の創設行事でお父様は、確信に満ちたみ言葉を語られました。

「平和の主人と起源は神様です。人類の平和のために設立されたUNは今、神様を中心に新たに更新(renewal)されなければなりません。世界平和のためのUN更新の道に、宗教と政治の両面の世界指導者たちが共に努力してくれることを訴えます」

このような組織が簡単に作られるでしょうか。

1998年12月8日、私が日本で祝福を主導した日でした。夕方、南米におられるお父様から電話が入りました。「IIFWP」創設を急がなければならないという指示のみ言葉でした。それは、韓国のアジア金融危機の時、「統一グループが倒産してしまった」という、余りにも申し訳ない報告をしてから、一週間しか経っていない時でもありました。グループ再起を後回しにして、「世界平和実現」という目標に徹しておられるお父様の心情を直感することができる出来事でした。

世の中にこんな指導者が、またといるでしょうか。

お父様の活動は、実際のところ、最初から超宗教運動でした。

1954年に創立された世界基督教統一神霊協会は、その名前から分かるように、霊性による世界キリスト教の一致を追求する団体でした。その後、50余年の間、草創期の統一家の食口たちが飢えるほどに財政が厳しかった状況でも、お父様は超宗教運動の分野だけは投資を惜しみませんでした。

私たちの教団の教会建築や牧会者たちの福祉よりも、世界宗教青年セミナー、世界宗教青年奉仕団、世界宗教協議会、世界宗教議会、世界宗教指導者会議、神様に関する会議などの毎年行われる超宗教平和会議と活動、世界経典編纂などの超宗教運動に、より多くの支援と情熱を投入してきたのです。

その結果として、世界平和宗教連合の基盤の上に、1999年、世界平和超宗教超国家連合を創設するに至りました。この団体の創設目的は、宗教と家庭の土台の上で全ての人々が、神様の下に真の愛を実践し、彼らが共栄を享受する世界市民となり、平和統一王国で共に生きる世界を実現することです。

その翌年の2000年には、UN本部で世界平和超宗教超国家連合ミレニアム総会が開催され、その場でお父様は、「二院制構想」を含むUN改革案を発表されました。

第一は、国家を代表する大使を中心に構成されている現UN総会を下院とし、全世界の霊的指導者と宗教分野の代表たちが参加する超宗教議会を新たに構成して、これをUNの上院とするという案です。

内的領域である宗教分野で上院を構成し、外的領域である政治分野で下院を構成するということです。心と体がお互いに協力して調和をなすように、宗教と国家と人種を超越して、地球村の問題に対応する上院と、国家と地域を代表する下院が協力することにより、人類を永久平和世界に導こうという方案です。

第二は、全世界の紛争地域と国境地帯を平和地区に転換しようという方案です。

具体的には、韓半島のDMZ(非武装地帯)を平和地帯とし、この地域を環境保全区域、平和のための博物館や展示館、平和公園などとして利用しようというものです。同時に、紛争地域と国境地帯を平和地区に転換することで失われる土地を補償するために、お父様は「南米のメルコスール地域に購入した広大な土地を寄付する」と宣言されました。

第三は、真の父母の日、真の家庭の日、平和UN軍の日をUNの記念日に制定しようという提案です。家庭は平和のための根本土台になります。幸福で平和な家庭が拡大することは、世界平和につながるのです。UNが真の愛と家庭の価値とイシューに集中することにより、深刻化するフリーセックス、同性愛、家庭崩壊、少年犯罪などに対して、UN次元の対応が可能となります。これはまた、創設時からUN内に蔓延している世俗的人本主義、物本主義、相対主義、唯物論の問題を解決するための方案でもあります。

超宗教超国家連合ミレニアム総会で、お父様は「もしUNがこの提案を受け入れなければ、国際NGOを通してでも現実化させる」という意志を明らかにされました。

お父様は私に、UNミレニアム大会を指示されながら、「あなたの責務の主流は、世界問題の解決である。韓国のIMF金融危機問題の解決は枝葉に過ぎない。国際NGO予備会談を急いでしなさい。UNに主人はいない」(2000年9月1日)とおっしゃいました。また清平21日特別修練会(36家庭から6000家庭まで参加)の訓読会では、「郭錠煥がUNを収拾し、真の父母と顯進が行く道を築かなければならない」と言われました。

UN中心の活動を行い、私は限りなく足りない自分を責める一方、UNでより大きな活動を期待されるお父様に恐縮な気持ちを持つばかりでした。UNの壁は余りにも高く、主権もなくUN大使もいない私たちは、多くの挫折を味わわなければなりませんでした。

2000年ミレニアム総会以降、お父様はUN本部で平和祝福式(Peace Blessing、2001年)を挙行されました。

真の父母様ご夫妻が主礼に立ち、全世界の政界、宗教界、教育界、文化界の代表たちが参観して祝う中、世界130ヵ国から国籍と人種と宗教を超越し、それぞれ固有の民族衣装を着て参加した新郎新婦210双が、神様を中心とする家庭を成すことを誓い、聖婚しました。

私としては、そのイベントの準備と成功まで、本当に困難が多かったため、夢のようであり、奇蹟のようなこととして記憶しています。「平和の殿堂UNで、必ず神様をお迎えした平和祝福式を挙行しなければならない」というお父様の意志のおかげで、天運によって成功した行事でした。平和祝福式の後、私たちの祝福行事はお父様の提案により、宗教と宗派を越えた宗教指導者たちが共に福を祈る、「交叉・交体超宗教平和祝福式」として挙行されるようになりました。

このような超宗教的活動を基盤に、2003年には世界の主要宗教指導者と霊的指導者たちが共に、ニューヨークで「超宗教超国家平和議会(Interreligious International Peace Council、IIPC)」を結成し、「これをUNの上院として採択すること」をUNに改めて促しました。

UNを上・下二院制に改編する方案は、私たちの提案の上程を、困難な中でも先頭に立って推し進めてくれた、フィリピン政府と米国政府、その他、数多くの支持国によって、彼らが準備した決議案として、UN総会の第58分科に上程されたのです。

超宗教超国家平和議会を発足させたこの大会でお父様は、「全ての国境線の撤廃」を訴えられました。お父様が語った国境線は、国家間の境界線だけでなく、「人類の平和と統一を妨げてきた全ての塀と障壁」を意味します。宗教、人種、民族も、その中に含まれています。

お父様は平和構築のための革新的な方法として、2003年、「超宗教超国家平和議会」に続き、2005年9月12日、米国ニューヨークのリンカーンセンターで、「天宙平和連合(Universal Peace Federation、UPF)」を創設します。この創設大会には、世界125ヵ国を代表する前・現職大統領、首相、最高位の宗教指導者、学界、文化界、NGO代表とUN大使など、各界を代表する1200人余りが参加しました。

この日、お父様は創始者の基調講演「神様の理想家庭と平和理想世界」を通して、神様の平和理想の根本を明らかにされましたが、このみ言葉は後日、『平和神経』第1章として、人類必読の教本となりました。

UPF初代会長に就任した私は、お父様ご夫妻に侍り、世界120ヵ国で創設大会を挙行しました。また、お父様の創設理想である「神様の永遠なる平和理想世界実現」のために、既存のUNの更新と共に、新たな次元でアベル的UNの機能を発揮することができる、新たな国際機関に発展させる活動を展開しました。

お父様は「内的真理を探し求めてきた宗教と、外的真理を探し求めてきた科学が調和を成す時、人は幸せを感じることができ、平和理想世界が実現される」という原理を教え、実践してこられました。

霊人体と肉身の両面が調和を成した幸福を追求する実践的な信仰生活を通して、人類はバランスのとれた幸福な人生の道を歩いて行くことができます。このような原理に基づき、霊的な価値に基づいた世界的な平和運動が行われたのです。

国家の境界を越えて活動する極端な宗教思想と世俗的な物質主義により、今日も世界の至るところで、次から次へと人類の平和を損なう葛藤と紛争が起こっています。このような時代に、お父様が築いてこられた平和活動の基盤がどれほど貴く、価値あるものでしょうか。

真の家庭理想の実現

真の家庭理想の実現

「人間の最も基本となる心性と人格は、家庭から形成されます。家庭は愛と人格、そして人生の出発であり、その根本土台となります。人間は家庭基盤の上で父母の愛によって生まれ、息子娘の段階から、夫婦の位置、父母の位置、祖父母の位置に位相を別にする愛の人格体として完成し、最終的に子孫の愛情の中で、天国に行くようになっているのが創造原理です。家庭を通して歴史と国が生まれ、理想世界が始まります。これがないと、個人の存在の意味もなく、血代の伝承もありません。したがって家庭は全ての価値と理念、そして制度と体制よりも優先される、最も貴い人間の愛と生命の本拠地となるのです」

『文鮮明先生御言選集』288巻 186ページ
(1997年11月27日)

「神様の血統の中には、真の愛の種が入っており、真の生命の体が生きています。したがって、この血統と連結されれば、神様が理想とされた理想人間、すなわち人格完成も可能であり、理想家庭も生まれるのであり、さらには神様の祖国、理想国家も出現するのです。平和理想世界王国は、このように創建されるのです」

『平和神経』<神様の理想家庭と平和理想世界王国>
(2005年9月12日)

お父様が生きて来られた生涯の究極的な目標は、このように「神様の真の家庭理想を実現し、これを基盤に平和理想世界王国を創建すること」でした。

そのみ旨と理想は、「堕落した人類を神様の血統に連結させてくれる真の父母と真の家庭の顕現」を通して実現されるでしょう。

真の父母と真の家庭の顕現の意義

神様の創造目的は、「神様を中心とする家庭」を成すことです。

神様は創造主として人間を創造されました。したがって、人間は神様の被造物にほかなりません。ところが、神様はただ創造主としてのみとどまることを望まれず、真の愛を中心に人間と一つになる「神人愛一体」の理想を成す関係を築こうとされたのです。

神様の願いは、人間から遠く離れて人間を見守る超越的な神様になることではありませんでした。神様は自らが創造した人間の父母となり、人間と親密な父子関係を結び、真の愛を中心として、永遠に一緒に暮らして行くことを願われたのです。

このような神様の理想と願いが実現されているところが、まさに家庭にほかなりません。

神様にとって家庭は、神様のみ旨が成される神聖な場所です。

神様にとって家庭は、神様の子女と共に生きていく聖なる場所なのです。

『原理講論』では、これらの家庭を「四位基台」を完成した家庭と説明しています。

四位基台とは、一人の男性と一人の女性が神様と一体を成すことはもちろん、彼らが互いに一体となって、理想的な夫婦を成し、理想的な子女を産むことによって成される、神様中心の家庭的基台を言います。

ところが、神様が創造された最初の人類であるアダムとエバは、このような神様の理想と希望を捨て、サタンを中心とした家庭を成したことで、神様の創造目的は実現されませんでした。この時から、神様は明確な目標と方向性をもって復帰摂理を導いてこられました。その目標とは、神様の真の息子娘を取り戻し、神様の創造目的である「神様中心の家庭」を再び成し、その家庭を中心として、堕落した人類全体を神様の子女として復帰するということです。

そのためには、堕落したサタンの血統と関係のない神様の独り子、メシヤが最初に来なければなりませんでしたす。

メシヤとは、失敗したアダムの使命を果たすべき、後のアダムを言います。

完成したアダムの資格をもって来られるメシヤは、堕落した世界において復帰されたエバを探し立て、結婚を通して、真の夫婦の位置まで進まなければなりません。しかし、メシヤの使命はそこで終わるのではありません。真の子女を生み、真の父母の位置まで進んで、真の家庭を立てなければならないのです。堕落した人類をこの真の家庭に接ぎ木して救うだけでなく、真の家庭を拡大して、神主権の国家と世界を建設することにより、地上天国と天上天国を創建しなければならないのです。

神様はこのようなご自身の計画を、2千年前、イエス様を第2アダムとして送ることを通して果たそうとされました。しかし、ユダヤ人たちの不信により成されませんでした。

神様は再び2千年後、文鮮明総裁を第3アダムとして送り、そのみ旨を成すための摂理を続けて来られたのです。再臨主の使命を持って来られたお父様は、韓鶴子総裁を復帰されたエバとして探し立て、聖婚して14人の子供を産み、「真の父母と真の家庭の基盤を人類歴史上初めて」築かれました。

真の父母と真の家庭が顕現したということは、何を意味するのでしょうか。

それは「神様の創造目的が実現される新しい黎明の時代を迎えた」ということです。

人類全体が神様の真の家庭に接ぎ木され、普遍的な救援が行われる時代が出発するのです。

救援と完成の単位が個人から家庭に転換される、驚くべき時代の出発でもあります。

何よりも、神様の真の家庭を基盤にして、神様の直接主管が可能な氏族と国家と世界へと、実体的な展開と拡散が可能になったことを意味します。

このように、「真の父母と真の家庭の顕現」は神様の摂理史における天宙史的な勝利であり、復帰摂理に終止符を打つ、摂理的大転換を意味するのです。

お父様は歴史上、どの人物とも比較することのできない、驚くほどの業績を数多く残されました。

その中でも最も輝ける生涯最高の偉業は、「真の父母と真の家庭の顕現を通して、神様の創造目的である神様中心の家庭を立てたこと」と言えるでしょう。

真の父母の定着

アダム家庭は、神様の創造目的を実現しなければならない歴史的位置にありました。しかし、サタンを中心とした家庭を築くことで、神様の創造目的は実現されませんでした。そのアダム家庭の失敗を勝利的に復帰しなければならないのが真の家庭です。

お父様は韓鶴子総裁を選び、聖婚され、善の子女を生むことで、人類史上初めて、神様中心の理想家庭、すなわち真の家庭を立てられたのです。

しかし、ここで終わりではありません。

真の父母様と真の家庭がモデル的家庭として定着し、彼らを基盤として、神様の主権が国家と世界に広がらなければなりません。つまり、モデル的平和理想家庭を通して、平和理想世界王国を建設する必要があるのです。それがまさに天一国時代であり、2013年の基元節の約束の意味なのです。

男性と女性は、神様の二性性相をそれぞれ代表して創造されました

このように、それぞれ神様の二性性相を代表して創造された男性と女性は、真の愛を中心として互いに相手の足りない部分を埋め、相互補完的な関係を結ぶようになっています。

アダムとエバは、このような創造本然の男性、女性の正しい先例を立てなければならない歴史的な人物でした。しかし、エバはサタンの誘惑に打ち勝つことができずに堕落してしまいました。続いてアダムが神様を離れ、サタンと一つになったエバに従って行くことにより、主管性が転倒してしまいました。

結局、アダムとエバは、神様の男性像と女性像を表す代表的男性と代表的女性の資格を備えることができず、人類の見本となる正しい先例を立てることに失敗したのです。

ここで、神様は蕩減復帰の過程を通して、失敗したアダムの代わりに、神様の愛と生命の種を持つ文鮮明先生、真のお父様を送られます。そしてお父様によって、失敗したエバを代身する女性として、韓鶴子総裁を真のお母様に立てられるのです。

お父様とお母様は、それぞれ「第3アダム」と「復帰されたエバ」として立ち、「代表的男性」と「代表的女性」の資格を備え、人類が見本とすることのできる男性像と女性像の先例を立てる責任を完遂し、真の父母の位置を定着させなければなりませんでした。

このため、お父様は神様の期待に応えて、神様のみ旨に絶対的に一致し、神様の男性像を代表する実体となることによって、後世のための正しい先例となられたのです。そして、夫人との関係では、真の兄と真の夫として、神様の主体性を表されたのでした。

一方、夫人となられた韓総裁は、これに対して、失敗したエバを代身して神様のみ旨に絶対的に一致し、神様の女性像を代表する実体となることによって、後世のための正しい先例を立てなければなりませんでした。すなわち、夫であるお父様との関係では、真の妹と真の妻として、神様の対象性を表わさなければなりません。そうすることで、エバがアダムとの関係で犯した主管性転倒の誤りを勝利的に復帰することができるのです。

真の家庭の定着

アダムとエバは、サタンを中心として偽りの愛、偽りの生命、偽りの血統の家庭を出発しました。

神様はアダム家庭の二世を通して、堕落の過程を復帰しようとされますが、カインがアベルを殺害することによって、それも果たされませんでした。これにより、人類は神様の創造目的とは程遠い、長きにわたる戦いと葛藤の歴史を繰り返してきたのです。

したがって、真の家庭は偽りの愛、偽りの生命、偽りの血統を拡散してきた歴史を断絶しなければなりません。神様の理想家庭実現を中心とした真の愛、真の生命、真の血統の新たな歴史を出発させなければなりません。また、神様-父-長子とつながる三大王権の縦的な軸が確立されなければならないのです。

神様と人間の関係は父子関係です。父子関係が持つ特性は、真の愛と真の生命と真の血統の関係です。神様と人間の間にこうした父子関係が結ばれ、また後世に受け継がれていく上で、その重要な権限と責任を持つのが長子権です。したがって、「本然のエデンの園において、アダムは神様の真の愛と真の血統を連結させる長子の立場にあるのです」(『文鮮明先生御言選集』345巻、41ページ、2001年5月27日)

もしアダムが堕落していなかったならば、「その子女がいくら多くても、長子が系統をつぐようになっていました」(『文鮮明先生御言選集』301巻、191ページ、1999年4月26日)

イエス様も同様です。「イエス様は神様の愛を受けることができる血統的な内容を中心として、長子権をもつ息子として生まれました」(『文鮮明先生御言選集』342巻、265ページ、2001年1月13日)そして、「もしイエス様に子女がいたとすれば、長子権をもつ息子が代をつぐようになっていました」(『文鮮明先生御言選集』231巻、273ページ、1992年6月7日)

このように、長子権とは、神様と人間が真の愛、真の生命、真の血統の関係を結び、これを後世に相続していく上で、代表的な息子に付与される重要な権限を言います。数多く強調された三大王権の教えも、長子権を通して相続され、完成されるのです。

もし長子権が立たなければ、神様と人間の根本的な父子関係も立てられず、また、その関係が後世につながることもできません。

お父様は1998年7月19日、文顯進様の世界平和統一家庭連合世界副会長就任式で長子権を付与され、相続構図を確定されました。これは人類歴史以来、初めて、神様の主権が永遠に臨在することのできる、「神様-真のお父様-顯進様」としてつながる三大王権の縦的軸が確立された瞬間であり、今後、3代を越え、顯進様の家庭と息子娘を中心として、第4次アダム圏時代における地上天上天国の完成と定着の願いを抱いて出発する、天宙史的な出来事でした。

真の家庭にこのような基台が整ったため、お父様は2001年、神様王権即位式と父子協助時代、二世時代の宣布を通して、神様の直接主管圏が真の家庭に定着し、人類全体に拡散することのできる、天一国創建と基元節に向かう力強い歩みを踏みだしたのです。

このように、四位基台の理想を実現した真の父母と真の家庭の顕現は、この時代の人類に、この上ない希望と祝福の知らせだと言わざるをえません。

祝福結婚の意義

道行く人を呼び止めて、「統一教会といえば、思い浮かぶものは何ですか」と尋ねると、異口同音に「合同結婚式」と言うことでしょう。

私たちはこれを「祝福式」と呼びます。「神様はアダムとエバに結婚という祝福を下さり、彼らが神様を中心とした夫婦関係を結び、善の子女を産み、神様を中心とした家庭を成すことを願われた」と「原理」は教えています。

祝福結婚は第一に、神様の息子である男性と神様の娘である女性の聖なる結合です。

男性と女性は、神様の男性像と女性像をそれぞれ代表して創造されたために、男性は神様の息子として、女性は神様の娘として生まれた貴い存在なのです。したがって、夫婦関係は男性と女性の単純な結合ではなく、神様の息子と娘の尊厳なる結合なのです。

よく父子関係を天倫と言います。天が会わせてくれた関係で、人の力では切ることのできない関係と人々は認識しています。一方、結婚を人倫之大事といいます。

しかし、お父様は「結婚の出発点は、まず神様との真の愛、真の生命、真の血統の縦的関係から始めなければならない」と教えられました。つまり、結婚は一人の男性と一人の女性が、神様を中心に迎えて夫婦になることで、絶対に分かつことのできない、新しい段階の天倫を横的に結ぶことなのです。一瞬のロマンチックな感情で始まり、時間が経つと消えてしまうものではないのです。

祝福結婚は第二に、夫婦の相互補完的な結合です。

原理によると、男性は神様の陽性的形状を代表して創造され、女性は神様の陰性的形状を代表して創造されました。したがって、これらの男性と女性は、神様のように完全な合一体を成そうとする本性の欲求を持つようになっています。お父様は、男性と女性がこのように異なるものとして創造されたことによって、磁石のN極とS極のように、お互いに引き寄せる性質をもっていると教えられました。

人類歴史を振り返ってみると、男性と女性の違いについて、男性は優れており、女性は男性の助けなしでは生きられない劣った存在であると考える傾向がありました。最近では、一部の女性たちがこれに反発して、「男性と女性の間の平等をなすためには、男性と女性の違いを認めてはならない」と主張しています。しかし、これは磁石のN極とN極、S極とS極が互いに反発し合うように、男性と女性の間の葛藤をさらに助長する結果を招きます。私たち統一家の中でも、社会的な雰囲気に便乗して、世俗的なフェミニスト運動を支持する人たちがいることを知っています。しかし、原理で教えている本然の男女関係が回復されれば、このような問題は自動的に、そして根本的に解決されるでしょう。

祝福結婚は第三に、肉体的、精神的、霊的な次元の結合です。

人間は霊的であり精神的な存在であるため、精神的で霊的な結合が欠如している身体的な欲望の充足だけでは、真なる喜びと幸福を感じることはできません。また、夫婦関係は愛の関係を通して子女を生みます。神様が創造主であり、父母として人間を創造されたように、人間は夫婦関係を通して子女を産むことにより、共同創造主の道を歩んでいきます。神様が人間創造を通して喜ばれたように、人間も父母となって、その喜びを体験するのです。

このように、祝福結婚を通して「神様-夫婦(男性と女性)-子女」が、理想的な家庭を成した形態を、原理では四位基台といいます。

また、『平和神経』第1章でお父様は、これらの四位基台を「神様と一体を成すことはもちろん、彼らがお互いに一つとなり、理想的な夫婦を成して、理想的な子女を繁殖することにより成される神様中心の家庭的基台」と規定しました。具体的には、「父母と子女は愛と尊敬で、夫婦は相互信頼と愛を土台として、兄弟姉妹はお互いに信じて助け合いながら、一つになって暮らすモデル的理想家庭」であり、「祖父母、父母、孫を中心として3代が一家庭で、永存される神様に侍って暮らす天一国家庭」と説明しました。

また、お父様は『平和神経』第2章で、それぞれがこのような家庭を成すとき、「父母の愛、夫婦の愛、子女の愛、兄弟の愛、このように4大愛圏、すなわち四大心情圏の完成」を見るようになり、このような家庭が「上下前後左右が一つに結ばれ、球形運動を続けるようになり、したがって、永存される神様のモデル的理想家庭と国家と平和王国になる」と明確に説明されました。

祝福式の歴史

祝福式の歴史は、再臨のメシヤである文鮮明総裁が韓鶴子総裁を選び、神様の祝福の下で「聖婚式」をした1960年4月11日から始まりました。お父様のみ言葉によると、この日は「エデンの園で人類始祖アダムとエバが堕落し、神様の創造理想である真の愛、真の生命、真の血統が実体化される真の家庭の理想を失って以来、神様が待ちに待った日」でした。

本来、アダムは神様の祝福の下、エバと結婚して夫婦の愛を交わすことにより、子女の誕生と共に、神様を中心とした真の家庭の四位基台を築かなければなりませんでした。この真の家庭の四位基台を通して、神様の無形の真の愛、真の生命、真の血統が、地上に有形実体として表われるのです。この真の家庭が拡大して、社会、民族、国家、世界を成せば、神様が理想とされた平和理想世界が実現されます。この世界は一つの完成したモデル的家庭と同様であり、人類は神様を父母とする一つの家庭を成します。

夫や妻が相手なしに一人で夫婦になることができないように、子女なしに父母になることはできません。真の子女の誕生と共に、お父様とお母様が真の父母となり、神様を中心とした真の家庭の四位基台が築かれたとき、36家庭の祝福式(1961年5月15日)が執り行われました。この36家庭の祝福式の意義は、原罪をもっている人類が初めて、神様の真の愛、真の生命、真の血統の実体である真の家庭に接木され重生された結婚式ということです。

私たちは普段、「真の父母様から祝福を受ける」と言います。しかし、神様の天道である根本原理を中心として、理論的により正確に説明するなら、「真の家庭に接木されて祝福を受ける」のです。重生というのは「再び生まれる」という意味ですが、すでに地上に生まれた人が再び生まれることはできません。そのため、真のお母様である韓鶴子総裁が最初の真の子女である文誉進様を妊娠し誕生させるまで、統一教会に入教した全ての食口は、この期間、開拓伝道活動や農村啓蒙奉仕運動のような献身生活を条件として、生みの苦しみの苦痛に同参し、真のお母様の胎内に入って出てくるのと同じ立場に立てられたのです。

すでに胎内にいる真の子女と食口たちは、いわば双胎、すなわち双子のような立場にあるとお父様は説明しました。それで、私たちは真の子女たちに対して年齢の多い少ないにかかわらず、お兄様、お姉様と呼んできました。それゆえ、お父様は「真の家庭が生命の木」と言われたのです。

聖書でアダム、救世主、メシヤ、再臨のメシヤは、生命の木として地上に降臨すると予言されています。真の家庭は、この生命の木が、アダムの個人単位から家庭単位に拡大されたものです。

真の父母の相対格は真の子女です。真の子女の誕生がなければ、真の父母も真の家庭もありえません。初めてお父様と韓総裁を真の父母の格位に立たせたのは、直系の子女である真の子女なのです。

真の子女の誕生があったために、お二人は初めて、真の父母の位相と真の家庭の基台を備え、原罪をもって生まれた人類に対する祝福の歴史を出発することができました。真の子女と祝福家庭は、幹と枝のような関係にあるのです。

幹の形が醜いからといって、枝は幹を否定することができるでしょうか。

幹なくして、枝が生き残ることができるでしょうか。

原罪をもって生まれた人類の重生式としての祝福式は、36家庭から始まり、72家庭、124家庭、430家庭、777家庭、1800家庭、6000家庭、6500家庭まで行われました。そして進展した摂理史の恩恵によって、1992年からは、祝福の普遍化と世界化により祝福式が行われ、全世界から多くの結婚適齢期の青年男女と既婚家庭が宗教、人種、民族、国家を越えて同参しました。

私は36家庭の祝福式の恩恵に与りました。私が祝福を受けた1961年には、祝福式に参加する上で天が求める基準も高かったのですが、何より、周りの誰からも理解されず、歓迎もしてもらえない環境でした。36家庭は一番最初に前人未踏の道を行く立場であったため、祝福の関門を通過して祝福家庭を成し、定着するまでの過程も困難を極めましたが、それ以降、3万家庭の頃までも、祝福式に参加する新郎新婦は皆、一度死んでから再び生き返るにも等しい立場で、家族、親戚、友人を含む周辺からの試練を全て克服しなければなりませんでした。

また、6500家庭(1988年10月)以降から、お父様は全ての祝福式の条件を国際祝福としました。祝福式に参加する新郎新婦はほとんど、お互いに異なる国籍を持つ配偶者と結ばれたのです。6500家庭はそのほとんどが、歴史的に根深い怨讐関係である韓国と日本の国籍の人たちでした。お父様は3万家庭(1992年8月)以降、全世界の国籍、民族、人種、宗教を全て越えてカップルを結びました。このように、国籍、民族、人種、宗教を超越した祝福式を、お父様は「交叉・交体祝福式」と言われました。そして2000年のミレニアム時代の幕開けと共に、お父様は、すでに故人となられ、霊界に行った霊人たちまで、霊的に祝福式に参加させることにより、霊人たちも神様の息子娘になることができる道を開かれるのです。

統一教会時代の祝福式に参加することができる条件や基準、そして祝福式の儀式は非常に厳しく、一般人には理解しにくい内容が多くありました。祝福式の参加を希望する男性と女性は、まず統一教会に入教して3年以上歩み、7日断食を3回以上、霊の子(伝道した食口)を3人以上、21日統一原理修練会修了といった条件を満たさなければなりませんでした。

祝福式に参加して聖酒を飲み、成婚誓約をしなければなりません。成婚誓約では、「神様を私たちの家庭の父母として信じ侍ること、夫婦が純潔を生命視し絶対的に守ること、子女を神様の息子娘として養育すること、神様の摂理と世界のために生きる人生を生きること」を神様の前に誓うのです。

祝福式に参加して祝福家庭の夫婦になったことを、真の父母である文鮮明・韓鶴子ご夫妻が宣布されると、新郎新婦は聖別期間(40日間夫婦関係を結ばず、天の前に精誠を尽くす期間)、3年間の公的献身生活(イエス様の3年公生涯期間を蕩減復帰し、その心情と一体となる期間)、それから祝福家庭として出発する直前に3日儀式を行います。

3日儀式は、エデンの園でアダムとエバ、天使長を中心に堕落し、偽りの愛、偽りの生命、偽りの血統の因縁を結んだことを総蕩減復帰する儀式をいい、祈祷精誠を捧げながら、神様の前に捧げる儀礼になります。一般的に言えば、夫婦の初夜に該当しますが、祝福式の過程では、最終的に神様の真の愛、真の生命、真の血統を相続した真の夫婦となり、真の家庭を出発するための通過儀礼となるのです。

祝福の普遍化、世界化、天宙化

家庭連合と「家庭盟誓」の時代が出発(1994年5月1日)する前までの祝福式は、教会と宗教次元で捧げる重生式であり、まさに統一教会の次元の儀式でした。

しかし、祝福式は、1993年1月1日に成約時代が出発し、1994年5月1日に家庭連合と「家庭盟誓」の時代が出発した後からは、教会圏と宗教圏を越え、統一教会の儀式でもなくなりました。これによって、いわゆる「統一教会時代」「蕩減復帰摂理時代」に祝福式参加のために必要だった条件、手順、基準、儀式などは大幅に簡素化され、開放されたのです。

お父様は、世界平和統一家庭連合を創設した1996年8月から「祝福の普遍化と世界化」を宣布されました。

祝福の普遍化とは何でしょうか。

まず第一に、宗派や教派、人種、民族、国家などの全ての壁を崩し、神様を父母として侍る真なる家庭を願う全ての人たちが祝福に参加できるということを意味します。

祝福儀式は、もはや如何なる教派や宗派の壁に閉じ込められた儀式ではなく、宗教というカテゴリの中にある儀礼でもありません。全人類に開かれたものなのです。

第二に、平準化という意味が含まれています。

平準化という言葉は、統一教会時代に個人の生命をかけ、高く困難な条件と過程を全て通過して受けた祝福と、家庭連合時代に入って大幅に簡潔化され、容易になった条件と過程を踏んで受けた祝福の価値には「差がなく同一である」という意味です。

祝福の平準化について、統一教会時代に祝福を受けて数十年間、困難で大変な信仰の道を歩んできた先輩祝福家庭と公職者たちが私に不満を打ち明けました。

「なぜ、私たちが統一教会の時代に受けた祝福と、このように簡単で容易に受けた祝福の価値が同じだと言えるでしょうか」

これについて私はお父様に尋ね、次のような答えを聞きました。

「堕落したアダムの子孫である人間は、どのような条件を備えても、原罪を脱いで神様の息子娘になることはできない。神様の苦労と恩恵によって祝福を受け、神様の特別な条件によって、皆さんが息子や娘として生まれかわることができたのだ。私たちの父母である神様は、基準をより下げて、最小限の条件でも立てれば、偽りの愛、偽りの生命、偽りの血統で苦痛を受けている人間を救い、解放させてあげたいのだ。それが父母である神様の心情である。全ての祝福の価値は同じだ」

また、祝福の世界化は、文字通り祝福の世界化であると同時に、国籍、民族、人種、宗教を超越した「交叉・交体祝福」という意味も含まれます。

交叉・交体祝福は、最近、韓国でよく言われる「多文化家庭」です。多文化家庭がこのように多くなる前には、「国際結婚家庭」という言葉がありました。

お父様は、この交叉・交体祝福式こそ、地球村の人類が一つの家庭を築き、一つの家族として平和世界を築くことができる最も確実な方法だと言われました。『平和神経』第1章では、交叉・交体祝福の意味がこのように説明されています。

「最も呪わしく、夢にも見たくない怨讐の家庭と、祝福結婚を通して一つの家族になったと考えてみてください。恨みの思いに凝り固まっていた父母たちの血統は消え去り、新しい強力な真の愛の血統が創造されるのです。両家の子女たちが夫婦となり、互いに愛し合い、幸福な家庭を築いて暮らすことを呪う父母がどこにいるでしょうか。いくら憎い怨讐の娘であったとしても、自分の息子の愛を受ける嫁となり、水晶のように清らかで澄んだ真の天の孫娘を抱かせてくれるとしたら、喜びの笑顔を見せないおじいさん、おばあさんがどこにいるでしょうか。白人と黒人が、東洋と西洋が、ユダヤ教とイスラームが、さらには五色人種が一つの家族になって暮らせる道は、交叉・交体祝福結婚の道をおいて、ほかに方法があるでしょうか」

ミレニアム時代、2000年代に入ってからお父様は、「祝福の天宙化」を加えられます。祝福の普遍化、世界化に続き、天宙化です。天宙化とは、地上で生きてから亡くなって霊界に行った霊人たちを祝福することです。

統一原理によれば、祝福は地上で生きている時にのみ可能です。霊界に行った祖先の霊人たちは、地上にいる子孫たちが祝福を受ける時、協助すると共にその恩恵を受けることができます。しかし、神様が祝福の天宙化の扉を開放して以降、霊界の霊人たちは、霊界で直接的に祝福を受けて天国に入ることができる道が開かれたのです。

もちろん、統一教会と「私の誓い」の時代が終わり、家庭連合と「家庭盟誓」の時代が始まった1994年5月1日以降においても、祝福結婚式の参加条件、儀式の手順、祝福後の家庭出発のための公的な条件など、従来の統一教会時代の内容がいまだに残っており、今でも部分的に実行されていることと思います。

しかし、神様は一人でも多くを救い、神様の息子娘として重生させ、その家庭と共にいたい心情で、条件と手続きを簡素化してきたため、祝福はさらに普遍化、世界化、天宙化の過程を踏むことでしょう。聖酒式、成婚誓約、祝祷、家庭盟誓を中心に、祝福儀式が再構成されるだろうと思います。統一教会時代、蕩減復帰摂理時代に必要だった儀式は簡略化されたり、なくなる方向に神様の祝福摂理が進んでいくものと予想します。

祝福の普遍化、世界化、天宙化の流れは、統一教会時代に祝福式への参加を難しくしていた宗教、人種、民族、国家などの全ての障壁を崩してしまいました。これらの神様の祝福摂理は、「祝福権」と「祝福執礼権」にも大きな進展がありました

お父様は、真の家庭の真の子女を代表して、霊界では文興進様、地上では文顯進様に「祝福権移譲」(2000年9月24日)を宣布しています。また、お父様は氏族的メシヤ(1989年1月)の使命を語られる中で、「氏族的メシヤには、自分の子女を含む氏族に対する祝福権がある」と何度も言及されました。祝福家庭の位相と価値と使命に関するみ言葉を語られる時にも、お父様は「祝福家庭には自分の直系の息子娘に対する祝福権がある」と言われました。

「祝福執礼権」もそうです。お父様は、1997年6月から指導者と祝福家庭に「祝福執礼権」を伝授しました。私自身が一番最初にお父様の指示を受けて全世界を巡回し、祝福式を執礼し、185ヵ国に派遣(1996年)された国家メシヤたちも、後には所属する国家で祝福権と執礼権を行使しました。また、氏族的メシヤの立場で、私を含む多くの幹部と先輩家庭が自身の姓氏宗中(嫡男家系親族)の祝福式を執り行いました。

お父様は真の父母の心情で、祝福をするために障害となるような全ての壁を崩してしまいました。

誰でも持っている信仰や宗教に関係なく、黒人でも白人でも、韓国人でも米国人でも関係なく、祝福に参加して「神様の真なる子女となって真なる家庭を築き、神様を父母として侍り共に生きたい」という願いと責任感だけ持っていれば、全て参加できると言いました。祝福を受けて祝福家庭になった後には、各自、自己の責任分担で「家庭盟誓」を訓読し、神様と共なる人生を生きればいいと言われたのです。

祝福家庭の責任と天一国実現

祝福家庭の責任と天一国実現

祝福家庭は、悪の歴史を清算し、生きておられる神様の真の子女権、真の父母権、真の王権を、真の愛の神様の王国の中で実現するための使命を受けました。その使命を果たすために、祝福家庭の前には「超宗教的・超人種的和合を完全に成就し、新しい国家と世界を実現するための道」が開かれたのです。

神様の王権と主管圏

このような世界をお父様は「天一国」と言いました。

天一国は、真の愛の中で二つ(二人ではない)が一つになる国です。

心と体が一つになり、夫と妻、父母と子女、霊界と肉界、神様と人類が一つになるところです。

したがって、天一国は、神様を中心とした統一世界の理想を表すのです。

お父様は生前、昼夜を問わず、天一国を実体的に成すための人生を歩んでこられました。神様の真の愛と真の生命と真の血統の実体である真の父母と真の家庭を根として、神様の王権を樹立し、神様を解放して差し上げ、神様の領土と管轄権を世界と天宙に拡張して、祝福家庭を天一国の主人にするために、生涯最後の瞬間まで精誠を投入されたのです。

お父様はいつも、神様の恨を解いて差し上げることに思いを募らせていました。

神様が主人であられ、神様が始原であられますが、その神様は主管権を一度も行使することができず、一度も主人としての待遇を受けたことがなかったからです。

お父様はこのような神様の恨を解くために、神様の王権を立てる摂理を進めてこられました。誤解され易いかもしれませんが、神様の王権とは、堕落した世界に見られる、権勢や力をもって牛耳ろうとするような王権を言うのではありません。真の愛の完璧な主管権です。

お父様は2001年、神様王権即位式を宣言として奉献し、その後、2013年基元節に「実体的な神様王権即位式奉献」を目標に、歴史全体を蕩減して実体的に勝利的な条件を立ててきました。その過程で、手に汗握る難しい節目も数多くありました。

一つ忘れられないのは、第1章で述べたイエス様の平和の王戴冠式の行事でした。

2003年12月、エルサレムに3千人の宗教指導者たちが集まって国際会議を進行している時、お父様は指示されました。

「ユダヤ教の代表、キリスト教の代表、イスラームの代表が一つになって、イエス様の王権即位式を挙行するようにしなさい」

常識と通念から外れたその指示に、当時、私は非常に慌てふためき、自分の考えでお父様の考えを変えようと努力しました。しかし、お父様の意思が曲がることはありませんでした。世界の誰が何と言おうと、「神様が送られた独り子イエス様の恨をまず解怨しなければならないこと」が、お父様の断固とした意思だったのです。

長時間の国際電話を通したお父様の指導と説得、お父様の意思を尊重する宗教指導者たちの幅広い理解、何よりも神様の協助の中で、2003年12月23日、奇蹟のような行事が開かれました。ユダヤ教の代表、キリスト教の代表、イスラームの代表、家庭連合の代表が、3千人の宗教界の代表と数多くの住民が集まった公園の野外ステージで、イエス様と聖霊の王冠を前にして侍り、即位式を挙行したのです。こうした戴冠式は、翌年、米国と韓国でも開催されました。

お父様が長い苦難の復帰歴史と、勝利的な摂理路程を歩んできたのは、優先的に人類の父母であられる神様の王権を樹立し、神様主管圏の主権と領域を広げるためでした。有形実体世界と、目に見えない無形実体世界(霊界)、すなわち霊人の世界まで、全天宙の前に、神様の主権と真の愛の主管圏のために狂ったように生涯を捧げて来られたのです。

このように、お父様は神様の主権と領域を確保するために、根本的な障害要因である共産思想とその勢力をなくすための勝共運動を、数々の犠牲をはらって展開し、神様の真の愛の理想に反する退廃的文化に対抗して、破壊された家庭の秩序と倫理道徳を正すための真の家庭運動を展開しました。また、世界的に若者を対象とした純潔運動を推進しました。神様の主管圏を拡散しようとするお父様の努力は、UN更新運動にまで展開していきました。政府の信任状一つなく、UNに踏み込んで仕事をするということが、どれほど難しいことでしょうか。そうした困難を突き抜けてきたお父様は、究極的に父母UN理想まで実現させ、全世界に神様の主管権が立てられることを願われました。それだけでなく、サタンを許す地獄解放式を挙行し、さまざまな階層に遮られている霊界まで開門して、真の愛の主管圏が全霊界にまで及ぶようにする摂理の歩みを続けて来られたのです。

天一国主人・祝福家庭

天一国の主権である神様の王権を樹立し、天一国の領土である神様の主管圏を拡散する摂理と共に、お父様は祝福家庭の位相を、天一国主人の段階にまで格上げされました。

祝福の普遍化、世界化の摂理が出発して、お父様は祝福家庭にこう言われました。

「あなたたちは氏族的メシヤだ! 」(1989年1月)

過去の宗教歴史では想像できない革命的な措置です。祝福家庭が自分の氏族を祝福することができ、救うことができる救世主のような立場であるということ。お父様に侍り、み旨の道を歩いてきた私たちでも考えることができないものでした。

お父様はここで終わるのではなく、第4次アダム圏時代(1997年9月)を宣布されました。真の父母様の祝福を受けた全ての祝福家庭が、「家庭盟誓」の基準に従って生きれば、誰でも第4次アダム圏時代の中心家庭と連結されるということです。

第1アダムはエデンの園のアダム、第2アダムはイエス様、第3アダムは文鮮明先生、お父様です。第4次アダムは、アダムとエバが堕落前の立場で完成し、神様の祝福を受けた時代圏のアダムを言います。

この時からお父様は、祝福家庭が「自分の名前で祈る時代」(1999年9月)を開いてくださいました。このような時代が出発したために、お父様は祝福家庭に「祝福中心家庭」(2001年1月)の位相を付与されました。お父様のみ言葉によると、祝福中心家庭は「堕落世界と何の関係もない家庭」を意味します。したがって、メシヤも宗教も必要ないと言われました。真のお父様のみ言葉を訓読し、生活の中で実践すれば、全て解決されると言われます。このような祝福中心家庭に対して文顯進会長は、「神様-真の父母-真の家庭としてつながる『縦的軸』につながった拡大された真の家庭の一員」と説明しました。

最後に、お父様は祝福家庭に「あなたたちは天一国主人である! 」と言いました。祝福家庭を「天一国主人」(2002年11月)として立て、「家庭盟誓」1節から8節までの内容を「天一国主人」で始まるようにしました。「天一国主人、私たちの家庭は」で始まる「家庭盟誓」を見ればわかるように、天一国主人は、個人ではなく家庭が単位なのです。

このようにお父様は、摂理を進展させていきながら、祝福家庭を「氏族的メシヤ」「第4次アダム圏」「自分の名で祈る時代」「祝福中心家庭」「天一国主人」に格上げし、天宙的な価値を高めました。

しかし、このような立場と祝福を与えられたからといって、それ自体で資格を備えたということではありません。また、それによって神様が願われる究極的なみ旨が果たされるのではありません。本然のエデンの園で神様から受けた三大祝福の理想を、アダムとエバが自らの責任分担で成さなければならなかったように、祝福家庭にもそのような自己の責任分担があるのです。

お父様は、祝福家庭に天一国主人として、最終的な地位を与えられただけでなく、彼らの責任で、神様のみ旨を実体的に成していくことができる全ての権限と、基準とすることができるみ言葉を相続してくださいました。

2001年、「神様王権即位式」の後にお父様は何度も言われました。

「私は、あなたたちに祝福権と所有権と相続権とみ言葉まで全て与えた。もはや私が与えるものはない。その受けたものをもって、あなたたちが責任を果たして全て分け与えなさい」

お父様は、生涯、多くのみ言葉を残されましたが、全ての人類が神様の血統に接木された祝福中心家庭、天一国主人として歩むべき道と責任を「家庭盟誓」に集約してくださいました。615冊にも及ぶ膨大なお父様の御言選集と指導内容の総結論であり、天一国主人である祝福家庭が守らなければならない憲法のような家庭盟誓文を制定してくださったのです。

「家庭盟誓」第1節と第4節は、祝福中心家庭が神様の創造理想である地上天上天国を創建することと、自由と平和、統一と幸福に満ちた天宙大家族を成さなければならないという基本使命を明示しています。

第2節と第3節では、天一国主人になる家庭の基本道理と究極の目標を規定しています。つまり孝子、忠臣、聖人、聖子の家庭を成す基本道理と、四大心情圏、三大王権、皇族圏を完成しなければならないという理想的な目標です。

第5節と第6節は、家庭の具体的な生活指針を規定しています。毎日、天上世界に動機を置いて地上世界を統一させていき、自分の家庭が、生活において神様と真の父母様を証す家庭にならなければならないという内容です。

第7節と第8節は、「家庭盟誓」の結論に該当します。

神様の真の愛、真の生命、真の血統とつながった生活で、心情文化世界を完成しなければならず、神様と人間が真の愛で一つになり、内外において真の解放と自由を得る天国を完成するということです。

「家庭盟誓」は第1節から第8節まで「堕落や復帰や蕩減とは一切関係のない本然の世界で、本来の人間が神様の創造目的を完成し、神様の創造理想世界を形成して生きていくための道理と責任と役割」を明らかにした天一国主人の戒めなのです。宗教と人種、国家の垣根を越えて、全人類に残してくださったお父様の最も偉大な遺産であり、祝福のみ言葉なのです。

私たちはこのように、天一国主人、祝福中心家庭として、祝福権、所有権、相続権、み言葉を相続し、これらを拡張しなければならない使命と責任と権限を委任されました。常に忘れてはならない点は、「私たちの中心がどこで、根をどこに下ろしているのか」ということです。

もし、その根を正確に下ろすことができなければ、祝福家庭が立つべき土台がなくなり、それらの基盤は砂上の楼閣になるのです。

前述しましたが、神様のみ旨と本然の創造理想は、神様と真の父母様と真の子女の三代圏を成した真の家庭を中心に、神様の真の愛、真の生命、真の血統が実体化されることです。そこに祝福家庭の中心がつながっていなければなりません。

この根が揺らいだり、これらを忘却すれば、私たちが天から相続した祝福家庭本来の価値が光を失い、祝福家庭の権利と責任を果たすことができる土台を失うことになります。私たちは、この点を深く把握しなければなりません。

基元節は完成したのか

基元節は完成したのか

天一国の創建は、神様の摂理が指向する具体的な結実であり目標です。

その結実を神様に奉献する儀式であり、記念碑的な日が本来、基元節です。

お父様はこの日を2013年1月13日に定め、「この地上で天一国の創建と基元節を実体で神様の前に奉献して差し上げよう」と言いました。

この日を期して、真の父母様が天宙的な次元の聖婚式を完成的に行わなければならず、その基台の上で全ての祝福家庭が入籍祝福を受けて、天一国に実体的に入籍しなければなりません。そして、実体的な神様王権即位式をしなければなりません。

ところが、この基元節は主人公が聖和され、未完の状態のまま、地上の子女権と後世の責任分担として残ってしまいました。

真の家庭を中心とした天一国創建

私たちは、天一国創建と基元節の完成のために、お父様が私たちにご自身の遺志として残した責任分担が何なのか、もう一度考えなければなりません。

それが今後、祝福中心家庭であり天一国主人である私たちが進むべき方向だからです。

まず、天一国創建と基元節完成は、お父様の真の家庭の中でその代を継ぎ、三代圏と四位基台を中心として完成しなければなりません。この罪悪と曲折の世界が、その長い歴史を経て、人間を苦しめてきたのは、まさに罪の根本が、人類始祖によって発生した血統的な犯罪だったからです。

この血統的犯罪のしがらみを解かなければ、理想世界は夢に過ぎないでしょう。

神様、真の父母、真の子女へとつながる真の家庭の因縁を通してのみ、神様の真の愛、真の生命、真の血統の種が連結され、全ての罪悪の歴史と世界が整理され、人類が神様を中心とした家族になれるのです。

ここに相続の真なる意味があります。

時間的には、お父様を代身する立場で、その責任は次の世代に「縦」につながるのですが、摂理的な意味では、その責任が一つの体のように「横」に連なるのと同じです。

摂理歴史にもこのような例があります。アブラハム家庭の責任がイサク、ヤコブまで縦的に延長され、3代にわたって完遂されますが、これはアブラハムの当代において横的になされるのと同じです。

天一国主人となった祝福家庭は、必ず真の家庭の三代圏、四位基台に根差さなければなりません。

その根を絶対に離してはならないのです。

そして、これからは自分の家庭が主体的に責任をもって行かなければなりません。

お父様が残してくださった「八大教材教本」を中心に、私たちの摂理観と原理観を正しく立てて、天の前に祝福家庭の本分を尽くす中で、堂々と生きていきながら天一国をなし、天の前に基元節を奉献することができる、その日が来ることを願わなければなりません。

もう一つ付け加えるとすれば、「誰がお父様のように、この摂理的使命に対し責任をもって導く方なのか」ということです。その方の摂理的な位置は、第3アダムとして来られた真のお父様の使命、すなわち本来のアダムが成すべき使命を果たし、究極的に真の家庭をこの地上に定着させ、神様の主権が実際に臨む神様の国、天一国を立てて、基元節の理想を完成すべき立場であり、すなわち第4次アダムなのです。

お父様は、神様の本体の種をもって地上に来られましたが、それに加えて「使命的な責任分担を完遂するために、誰とも比較することができない生涯を開拓し、実践し、成しとげてきた方」です。

神様のみ旨と夢を叶えるために、神様の恨が何かを悟り、その恨を解放するために、忠孝之心をもって神様に代わり、罪悪の人類をどこまでも哀れみ、真の愛を一貫して実践してきた方です。

どこに行っても、誰に会っても、どのような状況でも、弁明したり、他の誰かの責任だと言ったことがない方です。

いつでも「全てのことは全て私の責任」「私がしなければならないのに、私ができなくてそうなのだ」と言われた方です。

50年余り、間近でお父様に侍りながら、余りに生々しく見聞きし、体感してきた事実です。

天のみ旨と夢に対する徹底した精誠と忠孝之心。

神様のみ旨を成すための不屈の闘志と推進力。

全ての世の中の出来事をご自分の責任として感じ、解決するという使命感と実践力。

このようなものを持っていなければ、その位置を想像すらしてはならないのです。

真のお父様の最後の報告

2012年8月13日、お父様は地上での人生の最後を整理される緊迫した瞬間に、最終的な宣布と共に神様に最後の報告を捧げました。地上で天一国創建と基元節奉献の日を迎えることができずに霊界に行かれるかもしれないという立場で、お父様の使命と責任を人類の前に最後の遺言として残された報告でした。苦しそうに息をされながら、神様の前に捧げてきた一つの生涯を、精誠を尽くして終えようとするその時を控えて、最後の遺志を残されたのです。

「今日、最終的な完成の完結を成して、お父様のみ前にお返ししますので、今まで一生をお父様の前にお捧げすることを知っておりますので、そのみ旨のまま、今や全ての生を終了する時間を、精誠を捧げて、終了する時間を備えて、本然のエデンの園、堕落がない園に帰り…アダムの妻が間違え、アダムが責任分担にかかったことを、全て超越することができるように全てのことを解放・釈放の権限を持ち、父母様の後に従いさえすれば、4次元でも、14次元でも、地獄に行くことを天国に養子として入ることができる4次元入籍と14人の息子娘たちを中心として、氏族メシヤが国家を代表することができる名前をなして、387の国だけすれば、全て終わることを宣布します。そのことを全て成した。全て成した。アジュ」

真の子女を中心として、祝福家庭が氏族的メシヤとして神様の祖国光復をなし、387ヵ国(アベルUN圏194ヵ国とカインUN圏193ヵ国)と言われたカイン・アベル一体圏の真の父母UN摂理を完遂すれば、み旨が成されるという宣布なのです。

「そのことを全て成した」ということは、どういうことなのでしょうか。

お父様から全てのことを相続した真の家庭の子孫たちと、天一国の主人たちが「後に従いさえすれば」「代表することができる名前をなして」「387の国だけすれば」という前提条件を語られました。つまり、遺業を引き受けて責任だけ果たせば、お父様の使命と事が全て成されるという意味が込められています。

この最後の遺言を尊び、「天一国主人、私たちの家庭」が行くべき道は何でしょうか。

本然の血統である真の家庭に侍り、神様の平和世界実現のための真のお父様の生涯、最終的目標を成して差し上げることではないでしょうか。

-事必帰正